勇者ではなく、倒されるNPCを主人公にする
GMTK Game Jam 2026 には間に合わなかった。それでも制作を止めず、短編作品として完成させるまでの記録。テーマ「カウントダウン」の解釈から、戦力バランス、指示システム、そして「締切内に完成させること」との違いについて。
2025年、私は初めて GMTK ゲームジャムにソロで参加し、『Memories of the Loop』という短編2.5DアクションRPGを制作しました。そして2026年——今年も参加したい気持ちはありましたが、仕事や他の制作が重なり、開催期間中に確保できる時間はかなり限られていました。
参加を見送ることも考えていました。それでも、発表されたテーマを見て一つの企画が浮かび、最終的には制作を始めることにしました。今回のテーマは「カウントダウン」です。
「カウントダウン」と聞いて最初に浮かんだのは、何かの行動回数が減っていくゲームでした。歩ける回数が決まっていて、一定の歩数に達すると死んでしまう——「七歩歩く前に死ぬ」という伝承のように、一歩進むたびに死が近づいてくる。そんな方向も少し考えました。
しかし考えていくうちに、重要なのは数字そのものではなく、「何か大切なものを失い続け、それがゼロになった瞬間にゲームオーバーになる」という構造ではないか、と思い至りました。ここから企画の芯が決まっていきます。
最も分かりやすいのは残り時間のカウントダウンですが、タイマーがゼロになるまで生き残るだけでは少しありきたりに感じました。次に考えたのが残機制です。ただし主人公が何度も復活するのではなく、戦っている集団そのものを残機にできないか——仲間が一人倒れるたびに、戦力と操作できる身体の数が同時に減っていき、全員が倒された時点でゲームオーバーになる。ここから、今回の基本となる仕組みが生まれました。
こうして、本作には三つの「カウントダウン」が生まれました。
時間がゼロになるまで耐える。仲間がゼロにならないように戦う。そして最終的には、相手がゲームを続けようとする気持ちをゼロにする。プレイヤーは何度でもリトライできるので、一度倒しただけでは本当の意味で勝ったことになりません。NPC側が本当に自由になるには、相手を倒すのではなく「このゲームをもう一度遊びたい」という気持ちそのものを失わせる必要がある——最終的にゼロにするべきものは、敵のHPではなく、プレイヤーの興味なのです。
前作『Memories of the Loop』は、主人公が勇者となり、魔物を倒して平和を取り戻す、比較的王道な物語でした。それなら今回は、勇者に倒される側——魔王側を主人公にしてみよう。ただし単純に魔王の配下として勇者を倒すのではなく、主人公を「突然自我に目覚めたNPC」にしました。
制作素材は前作と同じく、購入素材や無料素材、すでに手元にあるキャラクターやシステムを組み合わせています。今回はさらに、『Memories of the Loop』の主人公を勇者側のキャラクターとして再び使用しました。前作では魔物を倒して平和を守ろうとした主人公が、今回はNPCたちの視点から見れば、自分たちの世界へ侵入し仲間を倒していく存在になる。同じキャラクターを反対側の立場から登場させることで、二つの作品の間に小さなつながりを持たせています。
主人公たちは、あくまで第一層に配置された雑魚NPCです。設定上、勇者より強くすることはできません。しかし本当に弱いだけでは、プレイヤーが何をしても勝敗を変えられないゲームになってしまいます。
勇者側は明確に強いまま、NPCへの指示・操作する身体の選択・敵の攻撃への対応によって戦況を変えられる余地を残す方針にしました。その一点を探るために、実際の戦闘を何度も繰り返しながら、攻撃力、防御力、移動速度、人数、スキルの範囲とクールダウンを一つずつ調整しています。
強すぎる雑魚NPCでは物語の前提が崩れ、弱すぎればゲームとして成立しない。その間を探す作業が、今回もっとも時間を使った部分になりました。
本作は GMTK Game Jam 2026 の正式な参加作品にはなっていません。提出期間までに完成させることができず、その時点でゲームジャム作品として評価される機会は失われました。
それでも、制作を止める理由にはなりませんでした。基本となる仕組みと、作品として伝えたい内容はすでに形になっていたからです。ここで止めればまた一つ未完成のプロトタイプが残るだけ。もう少し続ければ、短くても最初から最後まで遊べる作品にできる。そこで提出ではなく、独立した短編作品として完成させる方針に切り替えました。
全3ステージ、5種類の戦闘キャラクター、指示システム、序章とエンディング、日本語・英語対応を備えた、約10分で完結する短編として公開しました。
プレイヤーは一体のNPCを直接操作するだけでなく、周囲の仲間へ簡単な指示を出せます。仲間をプレイヤーへ向かわせて攻撃させる ATTACK と、敵の大規模な範囲攻撃から逃れるため全員を分散させる SCATTER。NPC一体の性能では勇者に及ばなくても、仲間の位置と行動を管理することで、集団として戦えるようにしました。
現在操作している身体が倒された場合、主人公の意識は生き残っている別のNPCへ移ります。そのため、仲間の人数は単なる戦力ではありません。残機であり、次に操作できるキャラクターであり、主人公が存在し続けるための身体でもあります。この三つの意味が一つの数字に重なっているところが、今回いちばん気に入っている設計です。
その意味では、今回のゲームジャム参加は失敗です。しかし、そこで制作を止めず、一つのゲームとして最後まで完成させることはできました。
2025年に学んだのは、限られた時間と素材を使って作品を最後まで形にすることでした。2026年に学んだのは、「作品を完成させること」と「決められた締切までに提出できる状態へ持っていくこと」は同じではない、ということです。
次に参加する時は、まず提出可能な最小バージョンを完成させ、その後に理想の形へ広げていく。作品を完成させるだけでなく、締切の中で完成させることも含めて、次の挑戦へつなげたいと思います。